為替レートの問題解決
『国富論』のアダム・スミスは資本市場における自然の流れに沿った選別や淘汰を「神の見えざる手」と呼び、野村誼券の田淵節也元会長は「私の履歴書」(『日本経済新聞」連載)のなかで「お天道さまはお見通し」といいかえた。
金融テクニックは無から有を生むこともあるし、逆に有を無にすることもできる。
理屈はいくらでもつく。
だが、誰かを犠牲に自分だけがいい目をみるようなスキームが、正しいわけはない。
それは裏切りであり背信行為だ。
仕掛けたファンドや投資銀行だけを喜ばせるマネーゲームにすぎない。
だから、当面の資金調達には成功してもどこかでつまずく。
「お天道さまはお見通し」なのである。
バブル崩壊で間接金融の銀行も、それを監督する旧大蔵省も、自信を失い機能しなくなった時、それに代わる金融機能と再生機能を持つ存在としてクローズアップされたのがファンドである。
これも原型は米国に求められ、1990年代末から日本でも活躍を始め、それに触発された和製ファンドが次々に立ち上がった。
ファンドの存在を日常生活で感じることはない。
ヘッジファンドに投資する個人はかなりの富裕層に限られるし、企業に乗り込むのも特殊なケース。
普通は経済ニュースを通じてMファンドやスティール・パートナーズの存在に接し、その発想と行動パターンを知るぐらいで現実味はない。
なによりファンドマネジャーは臆病で目立つことを嫌う。
M世彰氏が露出していたのは企業を揺さぶるためにマスコミを利用していたからで、大半のファンドは正体を隠し、取材は受けず、ひっそりと黒衣に徹して、ひたすらカネ儲けに精を出す
当然だろう。
ファンドとはカネの塊であり、それは即ち欲望の塊である。
欲望には際限がなく、少しでも多くの利を求め、しかもエゴイストだから税金は払いたくない。
そのため本拠は、ケイマン諸島、パミューダ諸島、パージン諸島など英国領のタックスヘイブン(租税回避証券化という偽装第二章地)だが、そこには私書箱があるばかりでファンド主宰者の居場所は別だ。
彼らは、顧客に近いところにいるのが一般的で、日本の資金を預かっているファンドなら、東京にオフィスを構える。
しかし、運用者は東京の高い税金やうるさいマスコミなどの日を逃れるために、香港、シンガポールなどに居住することもある。
総じて高学歴の英語使いであり、気質はコスモポリタン。
間接金融の担い手である銀行員が謹厳実直、紳士であることを求められたのとはえらい違いである。
彼らは国家のためではなく、地域のためでもなく、顧客のためだけに責務を負う。
ヘッジファンドも投資ファンドもプライベート・エクイティ・ファンドもそこは同じである。
収益(利回り)を顧客のために上げることだけが求められ、その分シビアに売買するし、シビアに企業を再生する。
だから経済を活性化させるが、一方でファンド資本主義は、飛ばし、隠すシステムである
そこは、現代の資本主義を規定するグローバル化と重なる。
国境を越えてカネが自在に行き来する環境のなかで、ファンドを利用する個人や企業がとてつもない富を得て、二極化を実現、それを国家が把握していないことも多い。
日本を代表する資産家の大島健伸SFCG社長は、金融機関のトップとして公私ともに「ファンドの世界」を生き抜いている人だ。
その大島氏の資産管理会杜であるケン・エンタープライズ(ケン社)が、出年3月に受けた67法人税、源泉所得税、消費税、重加算税を含めて合計約M億円の課税処分のうち、法人税の課税処分は不当であるとして、その取り消しを求めた裁判が続いている。
一審はケン社の一部勝訴で二審は敗訴。
末の時点では、最高裁で継続中である。
この税金事件には、大島氏とその家族の所得税約9億6000万円の追徴課税処分の取り消しを求めた裁判もあり、W年四日、東京地裁は「SFCG(旧商工ファンド)株の売数課税を逃れるために、海外投資を装って所得を隠蔽した」として課税は適法と判断、大島氏側の請求を棄数した。
個人資産をめぐる話ではあるが、ここにはファンド利用、海外への資産飛ばし、グローバル化のなかでの国家と個人、進展する二極化などさまざまな問題が内包されている。
まず驚かされたのは、裁判資料に残された複雑な資産飛ばしのスキームだった。
国税当局はこれを「国際的租税回避スキーム」と呼んでおり、日本のみならず欧米先進国や中束、最近では中国、ロシアなどの資産家も、この「どこの固にも税金を支払わないスキーム」を探し求めている。
そのために、こうした資産家向けに国際的な税法に長けた弁護士、公認会計士、税理士などがチームを編成、顧客の要望に応えている例もある。
大島家とケン社のスキ-ムも精巧だった。
まず、ケン社が金利引%でEB債(他社株転換社債)を発行し、ドイツ銀行ロンドン支店を通じて、海外の法人を相手に販売した。
この3社の引受資金は、やはりタックスヘイブンに置かれたーPSやUTが拠出、それに投資家が資金を提供したという構図である。
最終的な資金の出し手(投資家)が大島家であったことから国税当局は、この複雑なスキームはケン杜が支払った金利を投信の運用益として、家族や家族が実質的に支配する海外の会社に渡すための仕組みと判断した。
つまり、資産管理会社であるケン社に貯まった利益を、金利として家族に資金移動することだという認定である。
裁判では、国税側の主張がほぼ認められたわけだが、ここで行われたファンド利用の「飛ばし」はごく一般的に行われている。
規制を受けず、貧欲に収益を追求するのがファンドの第1の目的だとしたら、投資家が正体をさらさずにすむことが第2の目的である。
投資家への配当が為された時点で課税すればいいというのが国税当局の考えだが、実現益を出さずにそのまま投資で回していれば課税されない。
また、ファンドを幾つも持って、資金移動を繰り返せば、それを日本の税務当局が追うのは不可能だ。
資産家のカネを預かるプライベートバンカーがこう断言する。
(ユニットトラスト)であり、同じくマン島法人の「年金も預金も困が守ってくれない時代に、海外に資金がシフトするのは当然でしょう。
資金移動はパソコンの画面で出来るし、商品もノウハウもあふれでいる。
タックスヘイブンに置かれたファンドというと、安全性に問題があるイメージですが、要は支配権を確立していればいいわけで、国境なんて関係ない。
また、海外に資産を移すと、日本に戻したり、円に替えたりするときに困るという人がいますが、それは貧乏人の発想です。
資産家はそのまま海外に置いておき、運用を続け、必要なら海外で使えばいいんです」。
こんな確信犯的アドバイザーがいて、カネはあふれでいる。
ファンドの形で、カネや土地や株が世界を飛び回るのは当然のこと。
実際、日本の土地の金融商品化は恐ろしいほどの勢いで進んでおり、利回りが期待できる都会の商業地では、信託化され特定目的会社が設立されて受話権売買が行われている。
持ち主は私募、公募(上場商品のREITH不動産投資信託)を問わず不動産ファンドで、投資家の正体は隠されている。
かつて月刊誌が「田中角栄研究」という形で、丹念に不動産登記簿謄本を追うことで「首相の犯罪」を暴いていったことがあるが、いま、登記簿謄本は所有権の最終移転先が公認会計士が代表を務める無味乾燥な特別目的会社で終わり、その先がないそうである。
証券市場では連日、多くの上場企業が増資を発表しているが、その第三者割当増資先がタックスヘイブンのファンドであることが少なくない。
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